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気候変動への対応

気候変動に対する認識と基本的考え方

本投資法人は、気候変動が事業活動に大きな影響を与える重要な課題であると認識しています。
2021年に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書によると、1750年頃からの大気中の二酸化炭素など温室効果ガス(以下、「GHG」といいます。)濃度の上昇は、化石燃料の大量消費等を主要因とし、大気や海洋、陸域を温暖化させていると結論付けられております。また、同年開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議 (COP26)では、2015年パリ協定で定められた産業革命前からの気温上昇幅2℃未満のシナリオを許容していると、甚大な悪影響を免れないという意識が高まり、1.5℃目標に向かって努力することが、正式に合意されました。しかし、すでに1℃以上気温が上昇している現状からこの目標を達成するには、社会構造の変化を含めた対応を要するものと考えております。このような状況を踏まえ、本投資法人は、日本政府がGHG排出削減の目標としている、2050年までのGHGのネットゼロ(排出量(人為的なもの)から吸収量(人為的なもの)を差し引き、その合計を実質的にゼロにすることをいいます。以下同じ。)の達成について、その取り組みの重要性を認識しております。
本投資法人は、気候変動による影響及び世界的な枠組みの強化や脱炭素社会への移行に伴い生じる変革の波に順応し、安定的な収益の確保と着実な運用資産の成長を図るべく、気候変動が本投資法人の事業にもたらすリスクと機会を予測し、投資主をはじめとするステイクホルダーの皆様と協働し、資産運用体制に反映していくことが重要であると考えております。
なお、本投資法人が資産の運用を委託する東急不動産リート・マネジメント株式会社(以下、「本資産運用会社」といいます。)においては、環境や社会への配慮、ガバナンスの強化という課題を認識し、東急不動産ホールディングスグループ(以下、「グループ」といいます。)の一員としてグループのサステナビリティビジョンを共有しております。また、グループにおいては、「気候変動に関する目標」として、グループ及びサプライチェーンも含めた、2050年に向けて二酸化炭素の排出をネットゼロとする目標(以下、「ネットゼロポリシー」といいます。)を設定しております。
本資産運用会社は、これら課題等への取り組みは社会的責務であるとともに、同社の経営理念の実践であり、持続可能な(サステナブル)社会の発展に貢献するものであると考えます。こうした考え方を実践するため、サステナビリティ方針(以下、「本方針」といいます。)を定め、本方針に基づくマテリアリティを特定し、本投資法人と共有しております。本方針及びマテリアリティについては、本資産運用会社の「サステナビリティへの取り組み」をご参照ください。
気候変動の深刻化は、マテリアリティの一つである「環境負荷の軽減」への取り組みに対し、与える影響が極めて大きいことから、本資産運用会社は2020年9月に「グリーン調達基準」、2024年4月に「サステナブル調達に関する基本方針」を制定し、環境や社会に配慮した調達を行うことを広くサプライヤーに示し、相互理解のもと協働して取り組みを推進しております。
これら課題等への取り組みをより積極的に推進するため、本資産運用会社は、責任投資原則(PRI)への署名、GRESBメンバーシップへの加盟、ならびに国連グローバル・コンパクト(UNGC)を通じた事業活動を行っております。

TCFD提言への賛同表明

TCFDとは、気候変動は世界経済にとって深刻なリスクとし、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討する目的で設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures )」の略称です。
本資産運用会社は、2022年1月にTCFD提言への賛同を表明し、国内賛同企業による組織である「TCFDコンソーシアム」に参加しております。

気候変動に向けた組織のガバナンス

マネジメント体制

本資産運用会社におけるサステナビリティ(気候変動への対応を含みます。以下同じです。)に関する推進体制は、「推進体制について・マネジメント体制」をご参照ください。 

サステナビリティ推進会議

本資産運用会社では、サステナビリティへの取り組みにあたり、サステナビリティ推進会議を定期的に開催し、サステナビリティに関連する情報(気候変動への対応等を含む)を共有し、課題への取り組みについて検討・推進を行っております。加えて、サステナビリティに関する取り組みについて、定期的かつ継続的なモニタリングの実施を行っております。

環境管理システム

本資産運用会社では、環境面における課題の改善に継続的に取り組むため、PDCAサイクルに基づく独自の環境管理システム(以下、「EMS」といいます。)を確立しております。EMSに基づき、定期的な部門内会議を行い、マネジメント層へ報告、必要に応じてサステナビリティ推進会議へも報告しております。

気候変動対応基準

本資産運用会社では、気候変動への対応に係る事項については、気候変動対応基準にて、マネジメント体制の構築及びTCFDフレームワークを参考に対応方針を定めており、GHGの排出が気候変動に与えるインパクトを抑えるにあたり、グループの一員として、ネットゼロポリシーのもと、気候変動に関する指標と目標を設定するものとしております。なお、気候変動に関するリスク及び機会の管理については、「気候変動に関するリスクと機会の管理」をご参照ください。

取り組み状況の報告

本資産運用会社におけるサステナビリティに関する報告、モニタリング体制は、「推進体制について・マネジメント体制」をご参照ください。

会議体等 運営主体 開催頻度
運用本部ESGミーティング 資産運用会社 年4回以上
サステナビリティ推進会議 資産運用会社 年4回報告
資産運用会社取締役会 資産運用会社 年1回報告
投資法人役員会 投資法人 必要に応じて報告

気候変動に関するリスクと機会を考慮した戦略

気候変動に関するリスクと機会を考慮した戦略の構築に際しては、気候変動対応基準に基づくネットゼロポリシーを踏まえ、以下のシナリオ分析を行っております。

シナリオ分析の前提

気候変動リスクは、「移行リスク」と「物理的リスク」とに大別することができ、本投資法人は、国際機関等*が公表している将来的な気候予測を主な情報源として、中期(2030年)、長期(2050年)を時間軸とした、「4℃」、「2℃未満」、「1.5℃」の複数シナリオ分析を実施致しました。

* IEA(国際エネルギー機関)World Energy Outlook 2023
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書(AR6)等 を参照

4℃の世界観

脱炭素対策の進展がないことから、温室効果ガスの排出量は高く、自然災害の出現頻度は増加することを想定しており、移行リスクよりも顕在化する物理的リスクへの対応が必要となるシナリオです。

気候・自然環境
  • 国内平均気温が20世紀と21世紀との比較で年4.5℃上昇
  • 21世紀末にかけて、猛烈な台風の出現頻度が増加
  • 日本の洪水発生頻度が、21世紀末には20世紀と比較し約4倍
  • 温暖化による海面上昇(世界平均0.45~0.82m)に伴い、高潮の発生頻度が増加
政策・法規制
  • 脱炭素政策に関し、現行から進展なし
  • 炭素税や排出権取引などの制度や建築物のエネルギー効率基準は、現行から強化なし
  • 防災、減災に関する法規制の強化
  • 一方、既存物件のエネルギー効率改善は緩やかなペースで推移
投資家・金融機関
  • ESG投資は一定程度増える一方、投資判断時に物理的リスクを考慮する実務が定着
  • 環境配慮型のファイナンス手法は多様化するものの、統合的あるいは標準的な判断基準は整備されない
本投資法人
  • 洪水や集中豪雨への対策費用が増加
  • 自然災害による物件の被害に起因した操業停止に伴う営業損失が発生
  • 新築・既存建築物のZEB化要求は低い水準にとどまり、建設、改修費用は増加しない
  • 防災用品の調達、BCP発動に伴う対応、災害対応訓練など、PM、BM、AMの負荷が増大
テナント・顧客
地域コミュニティ
  • 熱中症対策、BCPなどテナント・顧客への健康、快適、安全性への配慮が増加
  • 平均気温の上昇により、一人当たり空調コストは現在の約3.2倍(61ドル/人)に増加
  • 災害発生時における地域コミュニティとの一層の連携強化

2℃未満・1.5℃の世界観

様々な環境規制が導入された結果、温室効果ガスの排出量が抑制され、建築物のZEB化が進むことを想定しており、物理的リスクよりも移行リスクへの対応が必要となるシナリオです。

気候・自然環境
  • 国内平均気温が20世紀と21世紀との比較で年1.4~1.7℃上昇
  • 台風の発生頻度・強度は現在と同程度
  • 日本の洪水発生頻度は、21世紀末には20世紀と比較し約2倍
  • 温暖化による海面上昇(世界平均0.26~0.55m)
政策・法規制
  • 新築建築物はZEB化が標準とされている。
  • 炭素税や排出権取引制度が導入され、2050年の先進国の平均的な炭素価格はCO₂排出量1tあたり250ドルまで上昇
  • 環境リテラシーの向上により環境基準や開示施策が拡充される
投資家・金融機関
  • 法令対応状況や環境認証取得状況を重要視
  • 投資家はESGを考慮した投資判断を行うことから、環境性能や防災性能が低い物件に対しての調達コストが増加する
  • 環境配慮型のファイナンス手法が確立され、審査判断に環境への対応状況が必須項目として求められている
本投資法人
  • 新築・既存建築物において、2030年以降のZEB化は、新築100%、既存物件85%超となり、達成のための設備投資の増加分が取得原価へ反映される
  • ZEB化の進展により、エネルギー消費量は2020年対比で40%削減となり水道光熱費が減少
  • 法規制やステークホルダー向けの環境対応や開示拡充のための営業費用が増加
  • 環境性能や防災性能の低い物件における賃料収入が減少
  • PM、BM、AMにおける法令対応の増加
テナント・顧客
地域コミュニティ
  • テナントは環境性能や防災性能が高い物件への選好がある一方、これらの性能が低い物件に対する需要は低下
  • 平均気温は上昇するものの、一人当たり空調コスト増加は現在の約1.8倍(35ドル/人)に抑制
  • 災害対応に関する地域コミュニティとのコミュニケーションが重要

分析手順

4℃の世界観においては、移行リスクよりも物理的リスクへの対応が必要となることを前提に、4℃のシナリオを想定し、より影響が大きくなる長期(2050年)について、「リスク」を抽出し分析し、2℃未満・1.5℃の世界観においては、物理的リスクよりも移行リスクへの対応が必要となることを前提に、2℃未満、1.5℃の2パターンのシナリオごとに、中期(2030年)と長期(2050年)について「リスク」と「機会」を抽出し、分析しました。また、財務的影響度を、定量的・定性的に分析し、評価しております。
なお、本分析にあたっては、現時点において収集可能なIEAやIPCC等の公表するシナリオやその他第三者の専門機関等が公表している客観的な予測データ等を参考にしながら、本投資法人の保有資産等の状況を踏まえて定性的・定量的な分析を試みたものであり、これらの分析評価には一定のリスクやその不確実性を前提とした部分も含まれており、必ずしもその情報の正確性及び安全性を保証するものではありません。






項目 リスクと機会に
関する説明
区分 財務的影響度
4℃の
世界観
2℃・1.5℃の世界観
4℃ 2℃ 1.5℃
2050年 2030年 2050年 2030年 2050年









GHG排出の価格付け進行 炭素課税賦課によるコストの発生 リスク  
環境性能が高い物件への移行による高効率化 機会  
既存製品/サービスに対する義務化/規制化 ZEB/環境規制等の対応による建設コストの増加 リスク  
ZEB/環境規制等の対応による検証費用等の増加 リスク  
環境性能が高い物件への移行による高効率化 機会  

既存製品/サービスに対する低炭素オプションへの置換 新技術導入に係るコスト増加 リスク  
環境性能が高い物件への移行による高効率化 機会  

消費者行動の変化 環境性能が低い物件に対する空室率の上昇 リスク  
防災性能が高い物件へ移行しないことによる需要減少 リスク  
高効率物件への移行 環境性能が高い物件への移行による資産価値の上昇 機会  

ステイクホルダーによる不安増大又はマイナスのフィードバック 投資撤退や資本市場へのアクセスが困難 リスク  
消費者行動の変化 防災性能が高い物件へ移行しないことによる需要減少 リスク  






異常気象の激甚化 豪雨災害等による対策コスト等の発生 リスク        
豪雨災害等による営業機会損失 リスク        

平均気温・海面の上昇 気温上昇に伴う空調コスト等の増加 リスク        
海面の上昇による浸水 リスク        

「リスク」をオレンジ、「機会」をブルーとし、色の濃さで影響度(小、中、大)を表しています。グレー部分は分析対象外。

分析結果

シナリオ(2℃未満・1.5℃)においては、 移行リスクが顕著となり、CO2排出の抑制を目的とした高額な炭素税の導入により、保有物件で排出されるCO2への課税負担等の運用コストの増加が想定されます。また、ZEB化や省エネ基準等の環境規制の強化により、その対応にかかる改修等の運用コストの増加も見込まれます。環境規制の強化によって、テナントの物件選択に大きな影響を与え、他社物件との比較において省エネ性が低い物件需要の低下も予見されます。
シナリオ(4℃)においては、脱炭素対策の進展がないことから、温室効果ガスの排出量は高く、異常気象の激甚化による保有物件の損傷と修繕費等の増加が予想されます。

なお、前回の分析結果と比較して、著しい変化や懸念事項は検出されませんでした。

気候変動に関するリスクと機会の管理

気候変動に関するリスクと機会及び気候変動への適応・レジリエンスに係る重要課題への対応は、本資産運用会社の気候変動対応基準において、サステナビリティへの具体的な取り組みとして定められております。
また、本資産運用会社は、2022年1月にTCFD提言への賛同表明に際し、気候変動が本投資法人に及ぼす影響に伴ったリスクと機会を特定し、特定したリスクと機会が本投資法人の事業に与える影響を把握したうえで、シナリオ分析を実施いたしました。分析においては、リスク発生の可能性と発生時期、発生した場合の財務影響評価に基づき、特に重要性が高いリスクを洗い出しています。
分析結果を踏まえ、従来の取り組みを再確認し、更に向上するため、EMSの活用等を通じてPDCAサイクルに基づく部門管理を行い、サステナビリティ推進会議において、本投資法人における対応・進捗状況について報告及びモニタリングしてまいります。

気候変動に関する指標と目標の設定

指標及び目標

本投資法人は、本資産運用会社と共有するマテリアリティのひとつである「環境負荷の軽減」について、同マテリアリティが与える影響度はリスク・機会であるという視点をもって、当該取り組みへの重要性を考慮し、マテリアリティとして特定しております。
また、本投資法人は、「環境負荷の軽減」において、省エネルギー、脱炭素、節水、廃棄物削減を4大重要項目として、取り組み方針を定めております。特に、気候変動への対応について、本投資法人は、本資産運用会社の気候変動対応基準に基づくネットゼロポリシーを踏まえ、気候変動に関する本投資法人の指標と目標を設定しております。

エネルギー起源CO2排出量について2030年までに電力由来のエネルギー起源間接排出量を100%削減※ 2030年度までに直接管理物件で再生可能エネルギーを導入するほか、他の施策の検討とあわせ具体的計画を策定
共有・区分物件・底地を除く
ポートフォリオのグリーン化※ 2030年度時点での環境認証取得割合:70~80%維持
グリーンビル認証とは、CASBEE不動産評価認証、BELS評価、東京都中小低炭素モデルビル、DBJ Green Building認証等をいいます。
底地物件を除く保有物件の延床面積をベースとします。

目標に対する進捗状況及び取り組み事例

本投資法人では、投資判断時におけるデューデリジェンスを通じ、エンジニアリングレポートによる建物劣化状況や土壌汚染の有無、各種ハザードマップによる浸水レベル、地震PML評価による予想最大損害額等を調査・確認しております。脱炭素社会への移行を見据え、これらのリスクへ対応し、競争優位性を維持する為、計画的なLED化やより省エネ性の高い設備への刷新に積極的に取り組み、ポートフォリオにおける環境認証取得物件の割合を高めてまいります。
エネルギー消費量・CO2排出量・水消費量・廃棄物排出量の環境パフォーマンス、環境認証の取得状況及び環境負荷軽減に関する計画的工事の実施等については、決算説明資料のESG関連情報をご覧ください。

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